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1992年 6月 作曲
第一楽章 地中海の風
コバルトブルーの海上を吹き抜ける風は、過去から未来への時の翼のようだ。光と影が別世界であるようなこの地中海で、海鳥の羽ばたきが色を添えている。
第二楽章 スペインの夜
夜のスペインは、異文化の混ざり合った激しい血の匂いを感じさせる。酒場から聞こえてくる激しいギターの音と手拍子のリズム。哀愁を帯びた歌声がそれとマッチしてやけに郷愁を誘う。 |
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1994年 3月 作曲 鳥山万季 委嘱・初演
エキゾチックな潮の香りに満ちる異国の島々、神々への祈りの声が鼓動のように響いてくる。
心ときめかす潮騒、風がささやき、波の音が心を打つ。昼と夜の狭間で、南国の空気は、一際輝いて見える。 |
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1990年 6月 作曲
ノクターン(夜想曲)は、ショパンの作品があまりにも有名ですが、そんなイメージで箏の小品にまとめてみました。
あくまで、甘く、切なく、ロマンチックに演奏して下さい。 |
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1994年 4月 作曲
弦の弾く音を聞くと、体の深い所で共鳴し、何か忘れていたものを呼び起こしてくれる。
そういった原初の響きを、箏・三絃・17絃という、それぞれ個性を持った弦楽器同志のアンサンブルで表現してみたかった。この三者は、いずれが主で、いずれが従というわけではなく、それぞれ自己主張しながら、絡み合い、反発し合い、また、溶け合っていく。序破急、あるいは不即不離という、日本の伝統的な美意識をベースにはしているが、あくまで現代性を意識して書いたつもりである。 |
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1996年 1月 作曲 岩田恭彦 委嘱
春夏秋冬の微妙な季節感を楽しんだり、花鳥風月を愛でるというような、自然に対する思い入れの深さ、繊細さを日本人は特に強く持っているように思われます。その中でも『春』、そして『桜花』に対する日本人の思いは特別のもののようです。
春は、雪の下でじっと息づいていた生命が蘇る時期(とき)。モノトーンの世界から淡い彩色がにじみ出し、カラーの世界へと変わる時期。そして人それぞれの希望が交錯する時期。この『春』という無限のキャンパスに、私は『音』という絵具を一面に散りばめてみたいと思います。 |
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1993年 12月 作曲
黄昏時は、怪しが現れるという逢魔の刻(とき)。
昼と夜、現実と空想の狭間で、残照と青白の月光が、あやしく解け合っている。
それは都会のふとした虚ろな空間にかげろうのように立ち上る眩惑的なワンシーン。 |
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1994年 6月 作曲
この作品は、吉沢検校作曲『千鳥の曲』の印象的なモチーフを素材にして、箏・17絃・尺八の三重奏として、現代的にリメイクしたものです。
吉沢検校は、箏組曲の中に流れる『品格』と『形式美』を、知的な観点と、すぐれた音楽的美意識から、見事に再生した幕末の天才といえます。とくに『千鳥の曲』は、『様式美』と『音楽美』とのバランスが絶妙であるという点で、きわだった作品ですが、この名曲を未熟ではありますが、私なりの感性で現代に甦らせてみようと試みたわけです。
組歌的なシンプルで格調高い箏の音色感とフレーズの流れを、尺八のやわらかさ、17絃の重厚さと対比させることによって、よりきわだたせ、また、そのモチーフをそれらの楽器に歌わせることによって、現代的なニュアンスを持たせようとしました。
全体的な構成としては、三つの楽器の混沌とした音のからみの中から『千鳥の曲』の印象的なモチーフの断片が多様の形で現れては消えていくという幻想曲形式になっており、演奏としては、リズム感や大きなフレーズでの流動的な自由さと、本質的に変わらない古典的フレーズでの美意識との対比がうまくできれば、おもしろいのではないかと思います。 |
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1993年 7月 作曲
初夏の爽やかな風に想いを乗せて歌ったラブソング。迸る(ほとばしる)ような激しいテーマに続いて、右手のトリルは風のうなりを、左手のせつないピチカートはあふれる想いを一気に奏でていく。たゆたうような中間部を経て、躍動的な後半は、生命の讃歌を謳い(うたい)上げる。
誰もが一度は感じる熱い感情を箏の音色に託してみました。 |
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1998年 1月 作曲 大西湧山 委嘱
尺八と17絃の甘く、深みのある音色はバラードによく似合う ……。
副題は、〜彷徨える吟遊詩人〜。
時代は中世ヨーロッパ。
当時、竪琴(たてごと)を携えヨーロッパ各地を放浪して歩いた吟遊詩人をイメージして、一片の叙事詩を奏でてみたかった。
彼らは、即興的に様々な物語を歌っていたのであろう。
荘厳な王家の栄枯盛衰の歴史から、勇壮な騎士の物語。想い人を戦いで失った悲話など、人々の過去から未来へ脈々と続く様々な営みを、喜怒哀楽を織り混ぜて語っていたのであろう。
エレジー、セレナード、レクイエム ……。彼らの奏でた魂の詩を、わたしも歌ってみよう。 |
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2000年 1月 作曲
高校生の祭典にふさわしく、「若々しさ」と「躍動感」、そして「新世紀への希望」をテーマに、箏・17絃の三重奏として書き上げたものです。若者達がそれぞれの人生を歩む姿を彷彿とさせるような、力動的で華やかな演奏を期待しています。 |
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